原爆の図

先日福島からの帰り東京都には寄らず、Kさんの実家近くの丸木美術館に行った。迫力に満ちている連作、原爆の図をみた。私の審美眼など疑わしいもので、美術的な意義を論ずることはできない。私が感銘を受けるのは、これを残した丸木夫妻の強烈な意志だ。
原爆投下3日後に、夫の位里氏の実家のある広島に夫婦で入ったそうだ。そして広島の惨状を目の当たりにした。怒り、哀しみ、悲歎、懺悔、非力など色々な感情をもっただろう。そして原爆の惨劇を繰り返さないため、その記憶を後世に遺さねばと強く思い、原爆の図とよばれる連作を遺した。
時に私はKさんとNHKの「映像の二十世紀」をみるのだが、それとは全く違う。丸木夫妻の絵は、ニュース映像とは異なり動きはなく写実的ではない。しかし、夫妻が当時に感じたであろうものが、そのまま絵を通して感じられ、それは、広島の原爆資料館に残る展示品の数々より強かった。
人間が意義ある存在であるための一つの条件は、記憶し記録を残すという作業だろう。医者という自然科学分野に従事する私は、主観を排し誤解や歪曲される隙がなく、客観的事実があるがままに記述された科学論文に美しさを感じる。原爆の図は丸木夫妻の意志そのものであり、科学論文の対局に位置するものだろうが、素晴らしかった。いいものを見た。後世に遺すべきものだ。
安倍首相は辞任するようだ。彼の言動からは、心揺さぶられるような熱情は何ら感じることはなかった。記憶するには値しない。辞任理由がなんであれ、忖度や粉飾・歪曲・隠蔽することなく記録されるべきである。

シャクゲバ

シャクゲバ=尺八を吹くゲバラ。この世の中を生き抜くには、この姿が必要と思いこの名前にした。日々感じることなどつづっていく予定。

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