スレイマニア

本日スレイマニアに移動。クルド・セイブザチルドレン(KSC)に立ち寄り、Hiwa病院を視察させてもらった。私がアルビルに常駐していた2009年当時からHiwa病院の存在は知っていた。しかし訪問することはなく、そこのDr.と交流する機会もなかった。今回初めてHiwa病院からDr.が一人参加してくれた。聞けばもうすでに骨髄移植(BMT)がされているという。私が今まで接していたアルビルのナナカリ病院やバグダッド・バスラの病院の悲惨な現状からは、まったく信じられなかった。このためこの滞在中に一度見ておこうと思い、アルビルから3時間余りかけて陸路移動してきた。確かにBMTはされていた。私が今まで見た他のイラクの小児がん専門病院とは全く違っていた。もちろん日本よりは少々荒っぽかったが、それでも骨髄移植や強力な抗ガン治療をするに値する設備と人材がそろっていた。2012年ごろからイタリアのチームが来て、骨髄移植をサポートしていたらしい。現在はすべてイラク人医師にハンドオーバーされ、彼らでBMTをマネージメントしていた。ここでは我々の支援など必要はない。

他のイラク内の白血病治療の現状は悲惨だ。医者は知識十分な人もいるが抗ガン治療の経験が少ないまま突っ走っている医師もいる。看護師のレベルはまだまだ。感染予防や清潔操作の概念はある程度はあっても、まったく実行できていない。スレイマニアと比べると、とんでもない格差である。その格差は政治的背景で生じたものだろう。スレイマニアは、フセイン政権後初めてイラクの大統領に選ばれたタラバニの出身地だ。それゆえふんだんに資金がつぎ込まれ、強力な指導の下最新医療の導入が進んだと考えられる。他のイラクの地域の医者・看護師・政府関係者たちがスレイマニアに来てみっちり研修を積み、他の地域の政府が同じように病院をマネージメントすれば、一気にイラクの白血病治療成績は向上するに違いない。我々の外からの支援など必要はないのだが、そうも簡単にいかない。

イラクの中では政治的分断が根強く残っている。アラブとクルド。クルドの中でもアルビルとスレイマニア。そういった人種的・政治的垣根が格差の原因の一つになっている。一つのイラクとして政治的統一ができておらず、その弊害が医師の間にもある。積極的交流に互いに慎重になっている。その犠牲になっているのは病気の子供たちだ。医療関係者たちを融合していければいいのだろうが、一NGOの力で何とかなる話でもない。難しい。写真はスレイマニヤの屋台街。ゲバラのTシャツを着て、ゲバラの入れ墨をしたおやじが、ゲバラの本を売っていた。

シャクゲバ

シャクゲバ=尺八を吹くゲバラ。この世の中を生き抜くには、この姿が必要と思いこの名前にした。日々感じることなどつづっていく予定。

0コメント

  • 1000 / 1000