国や組織は、有無を言わさず構成員を大義に従わそうとする。今日の朝ドラでは、大義に従うしかなかった主人公の弟がその苦悩をはいていた。国がしでかした無謀な戦争に巻き込まれ死を覚悟せざるを得なくなった帝大法学部の彼。「この戦争さえなかったら・・・」と繰り返していた。戦争がなければ死ぬことも人を殺すこともなく、法の道に進み弱者を救済するという大志を実現できたのに。無念であったろう。そんな学生、いや学生に限らず多くの日本人が無念を抱え死んでいった。
大戦前の秋丸機関を引き継いだ総力戦研究所は1941年の8月の時点で「開戦後、緒戦の勝利は見込まれるが、その後の推移は長期戦必至であり、その負担に日本の国力は耐えられない。戦争終末期にはソ連の参戦もあり、敗北は避けられない。ゆえに戦争は不可能」という「日本必敗」の結論を導き出していた。時の首相の近衛文麿や東條英機陸相はこれは机上の論理として採用せず口外することを禁止した。そしてその年末に真珠湾攻撃をやらかし、このシンクタンクが描いていた通りの転帰をたどった。総力戦研究所の結論を政府が排除せずに真摯に耳を傾けておれば、「この戦争はなかった」。
自民、維新の会および公明党は学府が彼らの大義に逆らわないよう、現代のシンクタンクの一つである日本学術会議を骨抜きにしたがっている。独立性をないがしろにし、政府に任命された外部機関に監視させ、予算を意のままにすることを匂わせている。予算を削るのはトランプもやった。政府の大義に最高学府が逆らえば影響が大きい。面白くない。大義を守らせようと、大学への予算を削り留学生を受け入れさせないよう圧迫している。反対意見を認めず封殺するのは、反民主的で質の悪い政府のすることだ。前文の”平和”を削除して”経済発展”を入れようとする品格のない政府が示す大義など、信じるに足りないものであろう。
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