使事を実感できなかった男

ハラミちゃんは、志事が使事になっていることを実感できた。今後も彼女は道を踏み外すことなく、充実した人生を歩めるだろう。しかし、志事を始めながら、使事であることを実感できずに残念な結末を迎えたアーチストもいる。尾崎豊だ。

高校時代は私事に過ぎなかった歌であったが、卒業前にデビューすることで仕事を飛び越え一気に志事となった。権威に対する反発・自由へのあこがれ・自分が何者か確信をもちたい若者特有の心情を楽曲にし、天才的な唯一無二のパフォーマンスで若者から絶大な支持を得、10代の教祖ともてはやされた。デビューから2-3年の彼は、自身の志事に確信をもっていただろう。しかし彼の志事は、ショービジネスの世界では仕事でしかない。周りの大人たちは金を得ようと彼を利用する。「夢のために生きていたはずなのに、いつの間にか金か夢かわからない暮らし」になり、「いったいなんだったんだ、こんな暮らし、こんなリズム いったい何だったんだ。きっと何もかもが違う」と感じていたのだろう。彼の志事は仕事に汚されてしまった。ペンライトを振りながらI love you を一緒に歌う観客席を、彼は冷めた眼でステージから眺めていたのでなかろうか?そして単に「自由になれた気がしていた」だけで「仕組まれた自由」の中にいたんだと感じていたのだろう。もちろん彼は、彼の志事の純粋さを維持するために新たな自由を得ようともがいた。彼はいったん活動を休止しアメリカへ渡った。後期の唄には、家族や愛・罪・贖罪といった言葉が多いそうだ(何かに書いていた。私は検証していない)。現実世界で自由を求め反抗することから、内的世界の自由を確立し世界を受容しようとしていたのだろう。それは、高校時代から始まった彼の志事をステップアップし、使事に到達するには必須だった。そこで何かを得ることができておれば彼の人生は変わったのだろうが、そうはいかなかった。彼の志事を理解しサポートできる人はおらず、アメリカから帰ってきて群がってくる仕事を求める輩を遠ざけることはできず彼は潰れてしまった。

潰えてしまった彼の志事であるが、それは間違いのないものだった。若者に対しては使事といってもよいものだった。死後30年以上経った今でもこのような駄文を書いているオヤジがいるのがその証だ。


シャクゲバ

シャクゲバ=尺八を吹くゲバラ。この世の中を生き抜くには、この姿が必要と思いこの名前にした。日々感じることなどつづっていく予定。

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