新型コロナウイルスがくすぶっている。東京では連日50名以上の新規感染者が出ている。しかし、再び緊急事態宣言を出そうとか東京アラートを引き揚げようとか、いうことにはなっていない。そんな中で政府は専門家会議を廃止した。もっとも西村大臣はあわてて”衣替え”と言い直したようだが、医学専門家主導で政策決定されることに不満を持つ政治家がたくさんいるのだろう。わからないでもない。
医学的に感染症を封じ込めるには、厳密な隔離が有効であることは確かだ。極端に言えば、2週間程度世界の人々が全く他人と接触せずに過ごせば新規患者は一気に0になる。それに近い状況を作りだすためにロックダウンなどが世界のあちこちで行われたが、経済活動の落ち込みが深刻となり、今では多くの国で制限緩和に向かっている。日本もそれに習い、経済活動を優先する政策に転換したようだ。医学の専門家ばかりで人命優先で政策提言されては、経済的落ち込みが深刻になってしまう。よって医学専門家の影響力を少しでも小さくしようと専門家会議を解体しようとしているのだろう。それは理解できる。政治家でない医学者が政策決定できる権利はない。専門家にできるのはあくまで提言だ。医学的見地からの提言の一方、経済専門家からの声もあろう。その両者の声を踏まえて、国民に最適な政策は何かを決定するのが政治家の役目だ。ドイツではすでに医学者と経済学者の共同研究がなされている。そこで出されたものは実効再生産数(Rt)=0.75という数字だ。
感染を早期に終息さすためにはRtをできるだけ0近くにすればよいのだが、そのためにはロックダウンが必要で経済への打撃が大きい。しかし制限を緩和してRtが1以上になれば感染は収束していかず、それもまた経済的損失をもたらす。ドイツの共同研究ではRt=0.75がベストという結果が出たそうだ。やみくもに厳密に行動制限をするのではなく、ある程度緩和して経済活動を維持してRt=0.75になるように調整できれば、医学的にも経済的にも許容範囲の結果が得られるというわけだ。
しかし実際にはRtの計算は難しいそうだ。必須条件として感染者数を正確に把握せねばならないのだが、検査数を故意に制限すれば計算できない。経済優先の政権の元、忖度や隠ぺい・改竄もへっちゃらな日本の行政組織で信頼できる数字が出せるかどうか?、疑わしいな。
0コメント