福島へ行き来の時に本を読む。今回は河崎秋子さんの「土に贖う」を読んだ。素晴らしい。北海道を舞台に、時代の流れとともに廃れてしまった養蚕や蹄鉄、レンガ場、ミンク養殖、ハッカ栽培に生きた人々の生活や悲哀を描いている。素晴らしいのはそこで生き抜く人々の描写だ。今は廃れてしまった斜陽産業の底辺で生きざるを得なかった人たちへの、筆者の敬意を感じる。筆者自身、現在も北海道で綿羊業に従事しているそうだが、苦しい生活で肉体を酷使する人たちの細かい描写は秀逸だ。どうあがいても私には書けない。
おそらく筆者の奥底には、そういった人たちがいたことを忘れ去り浮れ切っている今の大方の日本人への怒りがあるのだろう。森友問題に関わった政治家や官僚たち、これを読んでどう思うのだろうか?贖ってもらいたいものだ。
TVで、オリンピックが延期になっても負けない!不屈の闘志!などという番組をみかけた。しかし、失礼ながらアスリートの人達は恵まれた環境にいるのが大抵だ。米の失業率急増に見られるように、今回のコロナウイルス禍で最も影響を受けるのは不安定な非正規や観光業に従事する方たち。まさにこの本に描かれている人たちだ。そういった、生きるか死ぬか瀬戸際の人たちに目を向けなければ、彼らの怒りは暴力となり、この世界にさらなる混乱をもたらすだろう。贖わなければ。
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