責任の所在が明確でない場合、あるいは自然災害で損失を被った人の怒りや悲しみはやり場のないものだ。
1月5日にどこの放送局だったか失念したが、倒壊した7階建てに押しつぶされた被災者のそんな苦しみを流していた。おそらくは私と同年代の男性。地震直後は妻と娘さんも無事で、ビルの隣の家でかすり傷程度ですんでいたそうだ。しかしその後ビルが横倒しになった。妻と娘さんがその下敷きになり犠牲になった。その男性はカメラの前で、倒壊した自宅の残骸の横でジグソーパズルのピースを集めていた。奥さんが好きだったそうだ。汚れたジグソーのピースを袋に入れながら、怒り悲しみを抑えながら訥々と訴えていた。
「ビルが倒れなければ、みんな生きてたんだ。かすり傷で済んでたんだよ。けどビルが倒れて死んじまった。誰も助けに来なかった。泣いて叫んだよ。もう泣きすぎて涙も出なくなったよ。誰かを怒りたいよ。憎みたいよ。けど誰を憎めばいいんだ?妻はパズルが好きだったんだ。こんなジグソーのピースなんて他の人からすればごみで瓦礫かもしれないけどさあ。俺にとっては大事なんだよ。彼女の代わりに俺がするんだよ」(言葉は正確に覚えてはいない。このようなことを訴えていた。オリジナルのビデオがどこかにないだろうか?)
医学でもって彼の悲しみをやわらげる術はない。私にできるのは、一緒にジグソーパズルのピースを集めるくらいかな。
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